- 2008-10-13 (月) 22:55
- ほんとだすらい
妻が近所のレンタル屋さんからひょっこり借りてきて
昨日、お互い何の予備知識も無く、タラタラと見始めた。
松本清張原作ということで、どんなミステリーなのか、
半ば斜に構えての視聴開始であった。
とは言いながらも、
映画を見ながら、涙が流れたのは初めての経験である。
加齢のせいで涙腺がゆるくなったのでは、決してない。
物語が大詰めにさしかかる頃には、真っ正面から全ての展開を受け止められるように、
正座をする気持ちで見入ってしまった。
ハンセン病患者に対する差別や偏見に満ちた時代を背景にして、
人の宿命について深く描写されている。
その生い立ちや経歴などの過去を隠蔽しようとする真犯人と、
そんな、子どもを思う父の深い愛が悲しく浮き彫りにされている。
らい予防法は、昭和28年に施行され、
平成8年(1996年)らい予防法の廃止に関する法律をもって廃止されるまで続いた、
患者の隔離を主体とした法律である。
今日では、ハンセン病は感染しても発病することは極めて希な病気であることが
明らかになっており、仮に発症しても、治療方針が確立されており、
適切な治療を行うことによって完治する病気である。
「らい予防法」の見直しが遅れたこと等が、ハンセン病患者やその家族の尊厳を傷つけ、
多くの苦しみを与えてきたことは紛れもない事実である。
また、
原作者である松本清張や、俳優陣では、丹波哲郎、緒方拳、渥美清、加藤嘉、笠智衆
などの名優がすでに他界しており、このようなすばらしい作品は、
もう二度と作る事ができないのだろう。
表面をさらっただけの表現になってしまっているが、今の僕には、これが精一杯である。
砂の器
監督 野村芳太郎
脚本 橋本忍・山田洋次
1974年 松竹