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ナゴヤサナエの恩返し

高校生の頃、今から二十数年前に愛読(?)していた漫画がある。
先週は妻が、実家に行く用事があり持ち帰ってくれていた。
少年チャンピオンに連載されていた、
「気分はグルービー(佐藤宏之、秋田書店)」である。
若かりし少年の日を思い出しながら毎晩1冊づつ楽しんでいた。
しかーし、重大な事が1つあるのだ。

最終巻まで購入していなかった。
今、手元には12巻まで揃っている。
そう、手元にある全てを読破しても、残念ながら結末がわからないのだ。
調べてみると、そのコミックスは、全13巻で完結なのだそうだ。
さらに、悲しい事に現在は絶版となっているらしい・・・。
一緒に読み耽っていた妻は、「何故最後まで買わなかったのか」と漏らしていた。
あと、1冊で終わるのに、読めないのか。
このモヤモヤした気持ちはどうすればいいのか。
ネットでは、全巻揃いの5千円~9千円か、必要のない3巻や5巻が各120円、
中古として販売されているが、13巻はとんでもないプレミア価格(2千円)のもの1冊しか見つけられなかった。
ただし、今でも地味に人気があるという事がわかり、少し驚いた。
さて、8月18日木曜日の夕刻、
いつものように建物の裏手にある職員通用口から退勤しようとしていたときの事。
大きめのトンボが廊下を飛翔し、外に出られずにいた。
このままでは、この中で貴重な生涯を終える事になってしまうトンボが気の毒に思えた。
手で追って出口まで誘導したが、何を血迷ったかまた暗い建物内部に戻ろうとしている。
後輩と一緒になんとか出口まで再度追い込むとガラスに何度も当たってフラフラになり、壁際でバタバタともがいていた。
そこを両手で素早く捕まえて、一緒に建物の外まで出ることに成功した。
トンボの胸部側面には、鮮やかなエメラルドグリーンの線がはっきりしている。
普段目にするシオカラトンボなどと比べると大きいトンボだった。
子供の頃の記憶と照らし合わせて、オニヤンマにしては少し小さいし、色合いが全く違う。
見た事のない珍しい種類やなと思った。
また、戻っては元も子もないので、天井のない所で離した。
トンボはスーツと上空まで舞い上がった。
僕はそのまま、職場の敷地を通り抜けて、公用車の駐車場を抜けて、田んぼの畦を通って家路を急ぐ。
8月とはいえ、盆を過ぎると秋の兆しが見え始める。
稲穂は実り、頭を垂れている。収穫も間近だ。
用水路の水の流れも勢いをゆるめている。
でも、まだまだ日中の暑さは続いている。
ふと、視線を前にやった。
右斜め前方から、トンボがやってきた。
僕の顔の30cm程前でホバリングを始めた。
よく見ると、3本のエメラルドグリーン。
先ほどのトンボのようである。
これぞ正に、鶴の恩返しかなと考えたが、先日ネットで見た面白い書き込みを思い出した。

悪魔「3つ願いをかなえてやろう」
男「よし、、、しっかり考えるからちょっと待っててくれ」
悪魔「よし、ちょっと待とう。あと2つ。」
男「へ?おい!ふざけんな、!」
悪魔「わかった。ふざけない。あと一つ」
男「待て待て待て待て!今のなし!」
悪魔「わかった。今のは無しにしよう。さらばだ」

まさかね、「安心しな、見返りを期待したりしないよ、しかも君は悪魔じゃない」と心の中で思った。
時間にして5秒ほどのことだったが、トンボは僕の眼前で八の字を描いて、田んぼの奥の方に飛んでいった。
トンボは好意的な雰囲気であり、仕事でのストレスを抱えての帰宅途中だった僕の気持ちも和らいだ。
さて、その翌日19日金曜日の夕刻である。
件の漫画の13巻を求めて、市内の中古書店に向かった。
なにぶん、古い漫画であり、ドカベンのような超絶な人気作品ではなかったので、半ばあきらめていた。
どうしても読みたい気持ちはあるので、最終的には超プレミア価格の購入を決意しつつあった。
その中古書店では、出版社毎に陳列してあった。
しかも秋田書店が各棚に分散しており、非常に探しづらかった。
結局、店舗内をくまなく調査することになったが、予想通り、見る影も無かった。
完全に諦めた。
さて帰ろうかとも思ったのだが、なぜか、もう一軒だけ足を伸ばしてみた。
普段は、完全に諦めたこんな状況では絶対にしない行動だ。
こちらの書店では、作品名順に陳列されていて、検索しやすかった。
「気分は・・・」で「き」の棚に向かった。
当然、気持ちは諦めているのだが、、、、、

あった!

2巻と、13巻があった。
僕は迷わず13巻を手に取った。
価格は100円だった。
気分はグルービー_13巻_カバー画像

気分はグルービー 13巻
このイラストから、寿子はけんじと一緒になってると思うよ

涙が出るくらい嬉しかった。
ふと、昨日のトンボの事が頭によぎった。
彼が、この巡り合わせを演出してくれたのかもしれない。
不思議な感覚であったが、そうだと信じる事にした。
この漫画を読んでいたのは、大学受験のまっただ中から、高校卒業間際の頃。
当時、漫画の主人公と、僕の実生活が似たような感じで臨場感あふれる展開だった。
その後卒業、大学進学、就職、転職・・・と、ゴタゴタの日常の中で忘れ去っていた。
高校を卒業した後の、僕の人生は、今の通りだ。
漫画の主人公、けんじの人生はどうだったのだろうかと、
二十数年ぶりに、突然気になり始めてどうしようもなかった物語の結末を、今、知る事がができた。
この13巻を手にして、旧来の友人に、久しぶりに会えたような感覚だった。
※ 長文にお付き合い頂き、ありがどうございます。
これと言ったオチはありません。あしからず。
また、この漫画の事を知らない方は、本当に申し訳ありませんでした。

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